昔ながらに炭火で手焼き
ふるさと特産「まんじゅう麩」
やき麩の一種で、
形が饅頭に似ているところから、この名があります。
鳴子町、岩出山町、中新田町、古川市付近で
売られている郷土食品です。
お吸い物、味噌汁、煮物、鍋もの、すき焼き、などに使われ、お盆や法事の料理に欠かせません。
歯ごたえと弾力、香ばしさが持ち味で、
だしや煮汁をたっぷりと含んだ饅頭麩を噛むと、
旨味がジュッワっと口の中に広がります。煮溶けることはありません。
小一時間水に浸して戻し、ギュッと絞ってから調理します。
製造しているのは中新田町の石川麩屋さん。
三代目にしてこの道五十年の石川幸亮さんが、
昔ながらの焼型で、勘を頼りに炭火でこんがり焼き上げています。
明治時代、創業者の祖父幸朔さんが仙台の奉公先で習い覚え、
丸麩の名で売ったのが始まり。
やがて幸朔さんの下で修業して岩出山町に店を構えた斎藤さんが、
まんじゅう麩と名付けて広まり、当地方の食材やみやげものとして、
なくてはならない存在となりました。
その斎藤麩店も十数年前店を畳み、今や石川麩屋一軒。
石川さんも「跡を継ぐ者がいないので私で終わり」とおっしゃいますから、
百年の歴史ある郷土食材は風前と灯火です。
「おたくの麩おいしいね。と言ってくださる方に申し上げるんです。
それはあなたのだしがいいからでしょうって。」まんじゅう麩が名脇役であるように、
石川さんも至って控えめ。効率重視の時代に手作業を貫かれたのは、
そんなお人柄の故に違いありません。